良いスーツやハンドメイドについて考える Part2

ガエタノ・アロイジオ

現在のイタリアを代表するテーラーの一人。

Sさんが初めてウチで注文する際、参考に持ってきたのが、このアロイジオのスーツ。

横浜信濃屋での受注会で注文したもので、仕立て上がり価格は、約50万だったと聞いた。

やや重めの、サキソニーのような生地で、色はグレー無地。シングル3つ釦。
ブランド名は分からなかった(イタリアの仕立て服は生地ネームを付けないのが普通)が、
正直言って、生地はさほど、高品質なものではなかった。

これを預かり、工房で職人と一緒に、縫製を細かくチェックしてみた。(もちろん、Sさんの了承のうえで)

「へ~、こんなことやってんだ」「これ、どうなってんだ?」「何でこんなことやってんだろ?」・・・
職人と一緒に、興味深々で見ていく。
イタリアのトップテーラーの仕事を、現物で見る機会なんて、そうそうあることでは無い。

んで、結果は・・・・・・・・これで50万なら、安いんじゃね?

アロイジオのスーツは、特に縫い方に特徴があり、何とも面倒な縫い方を、労を惜しまずしている。
最初見ただけでは、何の為にこんな縫い方をしてるのか、分からないのだが、それをたどっていくと、
”なるほど、こうするためか”とわかるという具合だ。

同じ効果を持たせるなら、他にもやり方があるのだが、わざわざ、手間のかかるやり方で縫う。
何とも、拘りまくった仕立てといえる。

ウチの職人も、同じクオリティーのスーツを縫うことは出来ると思ったが、
同じ縫い方が出来るかと言えば、それは否。
それは、覚えてきた仕事が違うから。

同じような結果にするための方法は、一つだけとは限らず、職人によって、やり方も違う。
アロイジオのスーツは、その中でも最も面倒な手法を取っているようだ。

今まで、数多くの著名なテーラーのスーツを見てきたが、
アロイジオのような縫い方は、初めて見た。

”50万なら安い”というのは、”他に無い仕立て”という意味でもあるし、
同じ位の価格でも、首を傾げたくなるようなスーツもあるから。

やはり、フェラーリを作る国のスーツだな、と思った。

この話、もう少し続きます・・・・・

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