ニットの思い出

前回の続きを書こうと思ったが、予定変更。

先日、来店したお客さんが、原宿のヴィンテージ専門店、
オールドハットで購入したセーターを着ていた。

所謂、古着屋さんなので、年代は不明だが、30年以上前のものらしい。

見せてもらうと、首回りや袖のリブ部分のリンキングが丁寧に施されていて、
なかなか良いものだった。

今はテーラーだが、僕はもともとニッターに勤めていた。

最初に就職した会社は、大阪に本社を置くアパレルメーカーだった。

当時は既に、メンズ・レディース・スポーツ、そして、カットソーから重衣料まで扱う、総合アパレルだったが、
元々は、海外ブランドのニット製品を、ライセンス生産、販売する会社。

なので、新人はどの部署に配属されても、熊本にあるニット製品の自社工場に研修に行く。
そこで、羊毛の種類から始まり、セーター等の製品が作られる全行程を勉強するわけだ。

約一か月にわたる研修の最後には、自分のセーターを自分で作ってお土産にする。

僕が作ったのは、ビキューナの糸をほんの少し混ぜた、カシミヤの茶系のVセーター。
自分で着る前に、家族の誰かにあげちゃって、今ではどこ行ったかわからん。

当時、会社が作っていたニット類は、全国の有名デパートや専門店で扱っていたものの、
年齢的にはシニア層がターゲットで、個人的に魅力があるものではなかった。

だけど、縫製の良さ、モノの良さは、素晴らしかった。

毎日、工場長が、当時流行っていた有名ブランドの製品と、自社の製品を比べて、
良いニットとはどういうものか、徹底的に教えてくれた。

個人的には、あまり着る機会がないニットだが、良し悪しを見る目には自信がある。

むしろ、今扱っている服地やスーツをよりも・・・・・(それでいいのか?)

丁寧に処理されたリンキングや、最近は少なくなった(と思う)インターシャの柄等を見ると、
当時のことを思い出し、ちょっと嬉しくなったりするのです。

Bespoke Tailor Since1993 WILBEE