良いスーツやハンドメイドについて考える Part3

先日、前回、初めてサルトリア仕立て(ハンド)で、スリーピースを仕立てたお客さんが来店。
このお客さん、他のお店でもスーツを仕立てているが、全てマシン仕立てだった。

ウチのスリーピースを、職場に着て行った所、何人かの同僚から、

「このスーツ、作りが普通と違うね。オーダーメイド?」
「ここ、手で縫ってるんだ。」
「高かったでしょう?」

等々、思わず注目を浴びたそうで、まあ、好評価だったので、僕もひと安心。

お客さん、「サルトリア仕立てを着たら、今まで作った服が、既製品ぽく感じる。」と。

ウチのスーツの自慢をしてるわけじゃないよ。マシンメイドとハンドメイドの違いのこと。

これは私見だが、現在のマシン仕立てによるオーダー服は、
”既製品みたいな注文服を作る”、という方向で進化してきたと思う。

ライセンス服からインポート服、デザイナーズブランドと、既製服が質・量ともに紳士服の主流に。
さらにアルマーニの登場以来、紳士服にも、軽やかさ、柔らかさが求められるように。

丁寧に作られているが、重い・固い印象が強い、従来の日本のオーダー服は、
特に若い世代には、魅力的に映らなくなってしまった。

比較的リーズナブルで、既製服と競合していた”イージーオーダー”を扱っていた工場は、
店側の要望により、そういった既製服のデザイン性を求めて、新たにパターンを開発し、
より軽く柔らかくするため、副資材を研究し、その上、低価格を実現するための生産ラインを整備した。

その結果、現在の、”既製服のような注文服”が出来るようになったと思う。

これ自体は素晴らしいことで、日本のオーダーメイド工場の技術力は素晴らしいし、
多くの人に支持されてもいる。

が、多くの工場が、同じ方向を向いてきたことや、同時に既製服を扱う工場もあり、
当然のことながら、オーダー服と既製服との違いが無くなってしまった。

すると、
”サイズが合っているという以外、既製服とどこが違うの?”

と感じ、オーダーメイドならではの、ワンランク上の価値感を求める人が出て来た。

・・・・・続く
 
Bespoke Tailor Since1993 WILBEE